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      退職金制度の見直し 1  
     1.退職金制度見直しの基本  
   

1.退職金を取り巻く環境
 退職金の負担や退職金債務が企業経営に悪影響を及ぼしている。

 ・ 勤続年数の長期化
 ・ 団塊の世代の定年退職ラッシュ
 ・ 積み立ての不足・予定利率引下げによる支払い増加
 ・ 賃金連動型の退職金計算による退職金額の高騰
 ・ 退職金債務会計の変更

2.見直しのポイント
 次の3点を検討する必要がある。

 ・ 退職金額決定方式をどうするか?
 ・ 退職金の支払い金の準備をどうするか?
 ・ そもそも退職金は必要か?

3.退職金制度改定の方向性

 ・ 退職金制度に積極的な価値が見出せない。 → 廃止する
 ・ 退職金制度は存続させたい。          → 別テーブル制
 ・ 退職金に貢献度を反映させたい。       → ポイント制
 ・ 退職金は残したいが債務は残したくない。  → 中退共、特退共、確定拠出

4.退職金変更の法的実務

 ・ 既得権を保証することが大前提
   賃金連動型の場合、「現在の基準金額×定年退職時の支給係数」は最低保障する。
 ・ 合理的理由、社員の不利益への配慮が必要
 ・ 労使で話し合い、同意を得る
 

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     2.各退職金制度の特徴  
     
  内容 長所

短所

賃金連動型 退職時の賃金(基準額)×勤続に連動した係数 ある程度の金額の予想がつく。
他社との比較がしやすい。

 

退職金が年功序列になる。
意図せぬまに退職金額が高騰する。退職時の賃金のみが反映し、途中の功績が反映しない。
別テーブル制 勤続のみで金額が決定する。 簡単でわかりやすい。
使いやすい。
会社に対する貢献度が反映されない。
ポイント制 勤続や等級にポイントを設定しその合計で決定する。 退職までの貢献が反映される。
意図した退職金カーブを設定できる。
環境の変化に強い。
管理が煩雑。
適格年金   支給額が確定している。
税制の優遇措置がある。
利率が下がり掛け金が大幅に増大。

確定拠出型
(中退共)

 

等級ごとに掛け金を設定し毎月積み立てる。 将来の退職金支払い債務を負わない。
貢献度を退職金に反映できる。
退職金額が確定しない。
辞め方に関係なく支給される。
確定拠出年金型 一定ルールにもと基づいた掛け金を拠出し、それを、社員の意思で運用する。 運用リスクが回避できる。
年金数理計算などの運営の事務負担が少ない。
自分の判断で投資先を選択でき、積極的な資産運用を行うことができる
転職時に不利にならない。
社員が運用リスクを負い、将来の受給額が不確定。
前払い型退職金 賃金または賞与で退職金積み立て相当を支払う。 将来の債務を負わない。今の賃金が高くなり、優秀な人材を確保しやすくなる。 所得税や社会保険料の負担が増える。

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     3.退職金額の決定方式の検討  
    ● ポイント制の退職金制度の導入

 退職金制度を今後どうするにせよ(廃止、確定拠出型、確定給付型、前払い方式など)その金額決定方式を賃金と切り離し、毎年の加算額が計算できる方式にする必要がある。

 そのため、「退職時の基本給×勤続年数に連動した支給係数」という方式を改め、一旦ポイント制の退職金制度とする。

● ポイント制の退職金制度とは

 「ポイント制」の退職金計算とは、勤続1年に対して与えられる勤続ポイント(みな同じ)と、該当する職能資格等級に1年在級したときに与えられる職能ポイント(等級によりちがう)を合算し、退職時の累積ポイントに退職金単価を乗じて金額を決定する方式である。

退職金=(勤続ポイント+職能ポイント)の累積点×退職金単価×退職事由乗数
(退職事由係数とは、自己都合退職の場合に退職金額を減じるための係数である。)

 例
1 勤続ポイント

  1年につき20ポイントとする。ただし、勤続ポイントの上限を600点とする。

2 職能ポイント
  職能ポイントは格付けされた等級に1年在任するごとに付与される点数である。

等級

1等級

2等級

3等級 4等級 5等級 6等級 7等級 8等級 9等級
職能点 10 20 30 40 50

3 退職金単価 
  1ポイント 10,000円とする。これは、物価変動等を勘案して見直すことがある。

4 計算例
  勤続10年で、5等級に4年、6等級に6年在級していれば、
 (20×10年+10×4年+20×6年)×10,000円=360万円 となる。

● ポイント制採用の根拠

・ 将来の環境変化に対応できるようにする。
・ 将来確定拠出型や即時払い型に移行するときに、ポイント制であれば毎年の加算ポイント(加算金額)が明確になっているため、スムーズに移行できる。併用も可能である。
・ 賃金と退職金計算を切り離す。
・ 退職金は20年30年と長期的に考えていくものであり、現行制度のように退職時の賃金に連動していると、将来の賃金の変動(アップダウン)が退職金に大きく影響する。逆にいえば、退職金に影響するため賃金運用がダイナミックにできない。
・ 退職までの経過を反映するようにする。
・ 現行制度では、退職時の賃金に連動しているため、途中経過は関係なく、勤続年数と退職時の賃金が同じであれば、退職金は同じになってしまう。
・ 足し算による計算にし、将来の退職金額の予想額が容易に算出できるようにする。
・ 現行制度の場合、増えるもの同士の掛け算になるため(基準額、掛け率)、金額予想がつきにくく、また、予想以上に膨れ上がることが考えられる。

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     4.退職金の支払い金準備の検討  
    ● 選択1
 適格年金をそのまま継続する。(現状、税制適格年金により外部積み立てを行っている場合)

・ もう少し様子を見たい、よい方法が見当たらない、よい方法があっても社内の調整に時間がかかる場合。

・ その場合でも次のように手を打つことを検討する。(積立金不足の解消を図る)

1 計算方式については、ポイント制を導入する。(支給額が高騰するのを押さえる)
2 年金給付率の引き下げを行う。(一時金の場合は同じだが、年金にした場合の金額が下がる)
3 給付水準をコントロールする。
  (給付水準の引き下げは、社員全員の署名と国税庁長官の承認が必要であり、仮に引き下げたとしても、減額相当分の積立金は社員分配され、積立金不足解消にはならない。そこで、水準はそのままにしておいて、旧制度であれば基準賃金を上げない、ポイント制であれば等級を上げない等の方法で、実際の支給額を押さえるようにする。)
4 掛け金計算に用いる予定利率を引き下げる。すなわち、掛け金を増額する。

・ 税制適格年金は、10年以内(2012年3月31日まで)に「規約型企業年金」に移行することになる。規約型企業年金の仕組みは税制適格年金と基本的には変化ないが、次の2点が変わる。

・ 解約する時に従業員の同意が必要になる(適格年金は事業主のハンコで解約できる)
・ 『過去勤務債務』が拡大しないように掛け金の増額を強制される。
「規約型企業年金」は事業主にとっては明らかにデメリットしかない。10年以内に移行すれば良いのだから急ぐ必要はない。 

税制適格年金の長所・短所

  企業 従業員
長所

●より充実した福利厚生制度の提供により、良質な労働力の確保につながる。

●法人税法で定められた要件を満たすことで、掛け金を全額損金算入できる。つまり節税効果がある。

●資産運用を外部の専門金融機関に委託することで、効率的な資金準備ができる。

●原資を計画的に積み立てるため、毎年の支払いが安定する。

●退職金を年金で受け取れるため、老後の生活資金を充実できる。

●通常、年金で受け取る場合は相応の利息がつくため、トータルの受け取り額は退職一時金として受け取る場合より多い。

●積立金が企業の外部で管理されるため、安心感がある。

 

短所

●企業が赤字であれば税金はそもそもゼロであり、節税のしようがない。

●運用利回りが想定より低いので効率的とは言いきれないし、生じた不足の穴埋めで掛け金が安定しない。

●大企業・大金融機関があっけなく倒産する時代となり、安心ではなくなった。

 

 
     5.退職金の支払い金準備の検討2  
    ● 選択2
 前払い型の退職金制度に変更する。

1 適格年金を解約して積立金を社員に分配する。定年退職時の予定退職金額から分配金を差し引いて金額を定年までの年数で割り、その金額を年収に上乗せする。
予定退職金額の見積りが難しい。

2 日を決めて、現退職金制度を廃止する。その時点での自己都合退職金額を保障する。
保障の方法は適格年金の分配金とし、不足している場合はその差額を退職時に支給することとする。廃止以降の退職金については、ポイント制で年間獲得する金額を年収に上乗せする。

3 前払い型退職金のメリット
・ 確定給付型となり、後からの追加費用がない。
・ 権利取得即現金となり、支払い原資が経営リスクから分離される。
・ 退職金給付債務の削減ができる。なくなる。将来の債務を負わない。
・ 支給が早まり使途範囲が広まる。
・ 今の賃金が高くなり、優秀な人材を確保しやすくなる。

4 前払い型退職金のデメリット
・ 所得税が課税される
・ 社会保険料の負担が増える。
・ 上乗せ分を生活費に組み入れられて、退職金の意義がなくなってしまう。
・ 個人での資産運用には勉強が必要で、仮にうまく運用すると税金がかかる。

● 選択3
 確定拠出年金に移行する。

・ 拠出金額に上限がある。60歳まで引き出しできないなど、制限が多く、もう少し他社の状況を見たほうがよさそうである。

● 選択4
 中退共、特退共に移行する。

・ 加入条件を満たすのであれば、現時点ではより良い選択ではないだろうか。

 加入条件(詳しくは中退共のHPで)

職種 常時従業員数   資本金・出資金
一般職種 300人以下

または

3億円以下
卸売業 100人以下 1億円以下
サービス業 100人以下 5千万円以下
小売業 50人以下 5千万円以下

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