■ 人事制度の基本 9 |
||||||||||||||||||||||||||||
○ 人事制度の2つの考え方 今日本の企業では、人事制度の基本的な考え方が大きく分けると2つあります。ひとつは成果主義の人事制度であり、もう一つは育成型人事制度です。 ・ 成果主義の人事制度とは、成果による評価をしっかり行い、その結果を処遇に結びつけることで各人の成果に対する意識を高め、その結果全体の成果を上げていこうという考えです。 ・ 育成型人事制度では、成果だけでなく、行動や能力などの評価を行い、それを基に成果が上がるように指導育成し、その結果全体の成果を上げていこうという考え方です。 それぞれの特徴をまとめると下図のようになります。
どちらの考え方が良いかは、その企業の状況によると思いますが、現時点で言えば、新しい IT関連企業などは成果主義が向いているでしょうし、技術の伝承を必要とする製造業は育成型人事制度が向いているようです。
|
||||||||||||||||||||||||||||
企業 最近、成果主義について、色々批判的な意見が増えてきています。確かに、色々問題点もありますが、うまく機能している企業も無いわけではありません。 成果主義が機能している企業を見てみるとその特徴は次のようになります。この特徴に当てはまる会社は、成果主義を導入したほうがよいでしょう。
|
||||||||||||||||||||||||||||
よい人事制度とは「社員を成長させ、会社の業績を上げる」人事制度です。 人事制度で業績を上げるというと、「金銭をエサにやる気を出させる」とイメージする人がいますが、そういうことではありません。成果の出る仕事の進め方を見つけて指導する、また、それを評価基準に入れることによって実行するように仕向ける、そして、その結果として業績を上げるということです。 ○ よい人事制度の条件 @ 社員が理解できるシンプルな制度であること ○ よい人事制度=成果向上型人事制度の特徴 @ 評価の内容や基準を明確にしてオープンにする。(期待像を明確にする)
|
||||||||||||||||||||||||||||
人事制度を社内で作ることは、難しいことではありません。その気になれば、 また、社内で作成することにより、業績向上のノウハウも蓄積されます。 「人事制度は難しい」と尻込みせずに、是非社内で取り組んでください。 ○ 人事制度構築の決意 人事制度は、会社の根幹にかかわる制度です。もしかしたら、販売戦略以上に重要かもしれません。作成する以上は、それなりの覚悟が必要です。出張費の規定を決めることとおなじレベルで考え、取り組んでいるようでは決してうまくいきません。ましてや、同業他社の資料を借りてきて、これと同じにしようというわけには行かないのです。 人事制度を作成する前に、次のような決意が必要です。 1. 人材育成のための人事制度を作る。 経営者自らがそれなりの覚悟をし、真剣に取り組んでこそ初めて、自社に合ったよい制度ができるのです。 なお、実際に人事制度の作成を進めるのは、経営者が主導して人事担当部署で行ってもよいでしょうし、社内で人事制度作成プロジェクトを作って、そのなかで進めていってもよろしいと思います。 「はい」と決意と覚悟ができましたら、次に進んでください。 |
||||||||||||||||||||||||||||
成果主義の人事制度ではなく、成果向上型人事制度(育成型)の作り方を、このHPで徐々に掲載していきます。 上記43「よい人事制度の構築」に賛同できる方は、ぜひ、参考にしてください。 なお、お急ぎの方は「成果向上型人事制度の作り方マニュアル」をご利用ください。 また、福井県の方には、(財)ふくい産業支援センター 中小企業産業大学校主催の「成果向上型人事制度の作り方」セミナー(平成18年2月7日21日)が開催されますので、ご利用ください。 早く確実に人事制度を構築したい方は、人事制度構築コンサルティングやメールコンサルティングをご利用ください。
|
46.人事制度を作るための要点 | |||||||||||||||||||
人事制度を作るために必要なことは、次の3項目12点を決めることです。これらを順に明確にしていけばよいのです。決して難しいことではありません。
ダラダラと時間もかけて作るより、一気に作ってしまって、運用しながら不都合点あれば見直しするというやり方の方が、早く自社にあった制度ができます。 それでは、まず「評価制度」から進めていきましょう。
|
|||||||||||||||||||
47.評価制度の位置づけ | |||||||||||||||||||
1.評価制度の意味
評価制度の評価基準は、決して昇給や賞与を決めるための基準ではないということを肝に銘じる必要があります。 会社の価値を高め、業績を伸ばし発展していくために、期待されることを明確にしたものが評価基準ということができます。 2.評価基準と評価項目 評価基準は会社が社員に対して期待していること、上司が部下に対して期待していることを書き表したものです。すなわち、会社の価値を高め、業績を伸ばし発展していくために、期待されることを明確にしたものが評価基準であるということになります。 @ 期待成果と期待行動 A 知識・技術 B 勤務態度 3.指導に結びつける 成績の優秀な社員はただ単に「やる気」があるだけでなく、よい成績が出るような「仕事の仕方」をしているはずです。その優秀な社員のよい仕事の仕方を見つけて、それを評価基準の「期待行動」の欄に記述して公開することで、他の社員も優秀な成績を上げるための仕事の仕方がわかり、それを実行することで、優秀な社員に変わっていきます。これこそが、会社として「成果を上げるコツ」なのです。 「金銭をエサにやる気を出させる」のではなく、成果の出る仕事の進め方を見つけて、それを実行するように仕向けることで、成果を上げるということが大事なのです。 @ 日ごろの指導・育成 A フィードバックによる指導 4.処遇への活用 処遇とは「賃金改定、賞与、昇格・昇進」のことを指しますが、この処遇への活用については、評価結果と処遇制度との連動性を明確にし、その関連性を公開した上で運用するようにします。 5.管理監督者としての役割として人事評価 どのような人事制度であろうが、管理監督者には次のような役割があり、その役割を全うする義務と責任があります。
人事評価は管理監督者の役割を全うするためのひとつのツール(手段、方法)です。 6.評価制度をしっかり行うための要件 @ 評価制度をしっかり作る A 評価基準を明確にする B 評価ルールを明確にする C その評価ルールをしっかり浸透させる D 事実に基づいて評価する → 部下の評価をする上司として、管理監督者としての意識が高いことが大前提です。 ・
評価者自身が評価されるということを自覚する。 次回は、評価制度の作り方です。
|
|||||||||||||||||||
48.評価制度作成の基本 | |||||||||||||||||||
まず、最初に取り掛かるのは評価制度です。決めることは次の5点です。
1.何を評価するのか・・・評価項目、評価基準 2.どのように評価するのか・・・ 評価の方法、評価ルール 3.誰が評価するのか・・・ 評価者と被評価者の区分 4.どのように評価点を計算するのか・・・ 評価項目のウエイト 5.評価結果は何に反映されるのか・・・ 指導育成への反映、総合評価の決定 この中の「@ 何を評価するのか」と「C どのように評価点を計算するのか」は評価シートを作成することで完了します。自社の実情にあった独自のものを作る必要があります。 「A どのように評価するのか」は一般的な評価ルールがありますので、それをベースにすればよいでしょう。あまり自社用に変更すると整合性が取れなくなりますので、最初は一般的なルールで行い、どうしても不都合があれば、その時点で変更するようにするのが良いと思います。 「B 誰が評価するのか」についても、一般的な考えがありますので、それを具体的に自社の組織に当てはめればよいと思います。 「D 評価結果は何に反映されるのか」については、処遇制度との連携になりますが、ここでは処遇に活用するための総合評価の決定の仕方を明確にしておくことが必要です。
|
|||||||||||||||||||
49.何を評価するのか | |||||||||||||||||||
「何を評価するのか。」これは、会社が社員に何を求めているかを考えれば、明確になります。 普通に考えれば、まず「期待通りの成果を出して欲しい」という期待があります。これを期待成果といいます。 しかし、結果だけ求めたのでは、社員は成長しません。やはり、期待通りの成果を上げるためには、それに見合った行動をしなければいけません。成果の出ない社員に「やる気だ、根性だ」といっても、成果は出ません。成果を上げるためには、成果を上げるための行動が必要です。これを期待行動といいます。その「成果を上げるための行動」とは何かを、社内で明確にし、それをみんなができるように指導することで全体の成果が上がるのです。 したがって、「高い成果を上げるために、やるべきことをしっかりやって欲しい」という、期待行動は業績向上のためには、不可欠な評価項目となります。 また、期待行動を実行しようと思っても、それを行うだけの知識や技術がないとできません。当然、会社ももっと知識をつけて欲しい、もっと技術を磨いて欲しいと期待しているでしょうから、知識・技術も評価項目に入ります。 それから、組織人として当然守ってほしい規律や協調性なども必要になってきます。そんなことは、我が社ではみなできているという意見もあるかもしれませんが、今後新入社員も入ることでしょうし、一旦、評価項目に入れて、全員が問題ない勤務態度になれば、あとではずせばよいわけですから、最初は項目に入れておいた方がよろしいと思います。 このように考えると、次の4点が考課項目になります。
これらの期待項目を書き表したものが「評価シート」になるわけです。
|
|||||||||||||||||||
50.期待成果とは | |||||||||||||||||||
期待成果とは、会社として「期待通りの成果を出して欲しい」内容と書きましたが、成果とは何でしょう。 営業であれば、売上高、粗利額などすぐイメージがつきますが、総務の成果とは、一般事務の成果とは何でしょう。 普通に考えれば、成果とは「活動を行った結果」であり、例えば、営業活動ではなく、営業活動を行った結果としての売上高や粗利額を成果といいます。営業活動すること自体を成果ということはありません。 そう考えると、総務などスタッフ部門にも業務を行うことだけではなく、その結果どのような成果を出すのかを明確にすることが必要です。事務処理をすばやく行うとか、ミスなく行うことが成果ではありません。それらを行った結果として会社にどのような貢献をしたかが成果ということになります。
(顧客サービスは社外の顧客だけでなく、社内の顧客も対象になります。) まず、部門の期待成果を明確にすることが必要です。
目標管理制度を導入するにしても、この期待成果が明確になっていないと、うまく運用できません。 |
|||||||||||||||||||