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  人事制度の基本 9

 
   

41.人事制度の基本的考え方

 
   

○ 人事制度の2つの考え方

 今日本の企業では、人事制度の基本的な考え方が大きく分けると2つあります。ひとつは成果主義の人事制度であり、もう一つは育成型人事制度です。

 ・  成果主義の人事制度とは、成果による評価をしっかり行い、その結果を処遇に結びつけることで各人の成果に対する意識を高め、その結果全体の成果を上げていこうという考えです。

 ・  育成型人事制度では、成果だけでなく、行動や能力などの評価を行い、それを基に成果が上がるように指導育成し、その結果全体の成果を上げていこうという考え方です。

 それぞれの特徴をまとめると下図のようになります。

 

成果主義の人事制度

育成型人事制度

評価制度の目的

報酬を決定するために行う。

処遇にも活用するが、評価結果を基に、能力活用や育成に活用する。

評価制度の活用

成果を上げたものとそうでないものと、差をつけてメリハリのある処遇を行う。

成果の上げられなかった人の問題点を把握し、指導して全体のレベルを上げる。

人材育成

教育は自己責任。成果を出せるように自分自身が能力向上を図ることが第一。成果の出せる人を外部から調達する。

本人の努力も大事であるが、組織として上司の指導やOJTを実施する。成果の出せる人材を内部で育てる。

フィードバック面接

報酬を決定するための交渉の場。

仕事ぶりを振り返り、育成ポイントを確認する場。

 どちらの考え方が良いかは、その企業の状況によると思いますが、現時点で言えば、新しい IT関連企業などは成果主義が向いているでしょうし、技術の伝承を必要とする製造業は育成型人事制度が向いているようです。

成果主義成立の条件

成果主義を徹底した場合の問題点

努力しても、報酬増が無ければ、効果は出ない。

評価の対象となる結果だけを手段を選ばず追い求める。

評価の納得性が低ければ、効果は出ない。

高い評価を得やすい仕事には、できるだけ時間と労力を配分する。

自由裁量度が高く、自分の努力に応じて業績が変化する度合いが大きいほど、効果は高い。

評価を得にくい仕事には、できるだけ時間と労力を配分しない。

リスクを好まない人には、適さない。

評価の対象とならない仕事は、重要な仕事でも一切しない。

 

 
   

42.成果主義が機能する条件

 
   

 企業  最近、成果主義について、色々批判的な意見が増えてきています。確かに、色々問題点もありますが、うまく機能している企業も無いわけではありません。

  成果主義が機能している企業を見てみるとその特徴は次のようになります。この特徴に当てはまる会社は、成果主義を導入したほうがよいでしょう。
 しかし、当てはまらない企業は、早く成果主義から脱却した方がよいと思います。

企業は人なり

「教育は自己責任」という考え方が浸透しており、社員教育やOJTなどはほとんど行わない。能力のある人間を外部から調達するという考えが主流である。能力を高めるのは自己責任であり、その能力を使って成果を上げて初めて、企業に貢献したことになり、その成果に対して報酬を与えるとい考え方が浸透している。

・ 逆に、企業内で人材育成をするという考えの企業には、成果主義は機能しない。

技術の伝承

 企業特有の専門技術や管理技術を武器にしているのではなく、日々刻々と変わる最新技術を武器にしている。したがって、過去の技術を伝承するという必要は無く、最新技術をいかに取り入れ活用するか、の方が大事である。

・ 過去に蓄積した技術ノウハウを武器にしている企業では、成果主義は機能しない。

企業風土

・  成果という物差しを通して、企業と個人は対等である。企業も帰属意識や忠誠心などは要求しない。あくまでも成果と報酬の関係である。社員一人ひとりが個人事業主のような立場であり、社員一人ひとりが成果を上げれば、全体としての成果が上がるという考えである。そこには協調性とか応援とかという考えは、存在しない。

・ 「和」を尊ぶ企業では、成果主義は機能しない。

人事評価

・ 人事評価は、報酬を決めるためのものであり、それ以外の何モノでもない。したがって、明確に判定できる数値目標が中心になる。また、報酬を決める仕組みであるため、細かく規定しないと納得性が確保できない。フィードバックの面接も育成のための面接ではなく、報酬決定のための交渉の場である。

・ 年功で上がってきた管理職では、成果主義は機能しない。

企業業績

 高い成果を上げて、高い報酬を得ている人が存在するから、成果主義は機能する。能力がありそれなりの努力をすれば成果が上がり、報酬が高くなるというストーリーが成り立つからことが大前提である。

・ 斜陽産業や事業そのものが陳腐化しており、自己努力が報われない事業、企業では成果主義は機能しない。

 

 
   

43.よい人事制度の構築

 
   

 よい人事制度とは「社員を成長させ、会社の業績を上げる」人事制度です。

  人事制度で業績を上げるというと、「金銭をエサにやる気を出させる」とイメージする人がいますが、そういうことではありません。成果の出る仕事の進め方を見つけて指導する、また、それを評価基準に入れることによって実行するように仕向ける、そして、その結果として業績を上げるということです。

○ よい人事制度の条件

@ 社員が理解できるシンプルな制度であること
A 会社の業績が伸びることが「みなハッピー」になるような仕組みであること
B よい仕事の仕方を社員が教えあい、共有するような仕組みであること
C 評価結果は本人へフィードバックする仕組みであること
D 自社の実力に合った、運用しやすい制度であること

○ よい人事制度=成果向上型人事制度の特徴

@ 評価の内容や基準を明確にしてオープンにする。(期待像を明確にする)
A 評価結果は上司から本人へフィードバックする。(指導育成のため)
B 人事制度全体の仕組みをシンプルにしわかりやすくする。
C 評価の結果が、賃金、賞与、昇格、昇進にきちんと連動する。
D 会社の業績が社員の賃金、賞与に反映する。

 

 
   

44.社内で構築するメリット

 
   

 人事制度を社内で作ることは、難しいことではありません。その気になれば、
1ヶ月でできてしまいます。

 また、社内で作成することにより、業績向上のノウハウも蓄積されます。 「人事制度は難しい」と尻込みせずに、是非社内で取り組んでください。

○ 人事制度構築の決意

 人事制度は、会社の根幹にかかわる制度です。もしかしたら、販売戦略以上に重要かもしれません。作成する以上は、それなりの覚悟が必要です。出張費の規定を決めることとおなじレベルで考え、取り組んでいるようでは決してうまくいきません。ましてや、同業他社の資料を借りてきて、これと同じにしようというわけには行かないのです。

 人事制度を作成する前に、次のような決意が必要です。

1. 人材育成のための人事制度を作る。
2. 人材育成により、会社の業績を伸ばすための人事制度を作る。
3. 会社の業績向上により、社員の処遇がよくなる人事制度を作る。
4. 些細なことにとらわれないで、まず、シンプルなものを作成し運用する。
5. 問題があれば、修正すればよい。最初から100点満点を望まない。
6. 会社の業績は社員にわかるようにする。
7. 経営者自身の評価基準も明確にする。
8. 人事制度を賃下げの道具にしない。
9. 人事制度は社員を安い賃金でこき使うための道具にしない。
10. 作成した人事制度には経営者が責任を持つ。

 経営者自らがそれなりの覚悟をし、真剣に取り組んでこそ初めて、自社に合ったよい制度ができるのです。
 そして、それが会社と社員の繁栄をもたらしてくれるのです。

 なお、実際に人事制度の作成を進めるのは、経営者が主導して人事担当部署で行ってもよいでしょうし、社内で人事制度作成プロジェクトを作って、そのなかで進めていってもよろしいと思います。

 「はい」と決意と覚悟ができましたら、次に進んでください。

 
   

45.成果向上型人事制度の作り方

 
   

 成果主義の人事制度ではなく、成果向上型人事制度(育成型)の作り方を、このHPで徐々に掲載していきます。

 上記43「よい人事制度の構築」に賛同できる方は、ぜひ、参考にしてください。

 なお、お急ぎの方は「成果向上型人事制度の作り方マニュアル」をご利用ください。

 また、福井県の方には、(財)ふくい産業支援センター 中小企業産業大学校主催の「成果向上型人事制度の作り方」セミナー(平成18年2月7日21日)が開催されますので、ご利用ください。
連絡先 TEL:0776-41-3775

 早く確実に人事制度を構築したい方は、人事制度構築コンサルティングメールコンサルティングをご利用ください。

 

 
    46.人事制度を作るための要点  
   

 人事制度を作るために必要なことは、次の3項目12点を決めることです。これらを順に明確にしていけばよいのです。決して難しいことではありません。
平均2〜3日で一つずつ決めていけば、1ヶ月で自社にあったすばらしい人事制度が出来上がります。

項目

内容
1.評価制度

@ 何を評価するのか

A どのように評価するのか

B 誰が評価するのか

C どのように評価点を計算するのか

D 評価結果は何に反映されるのか

2.賃金制度

@ 賃金体系はどうなっているのか

A 賃金を決める要素は何か

B 評価結果はどのように反映されるのか

C 賞与の配分方法はどうするか

D 会社の業績をどのように反映するか

3.昇格・昇進制度

@ 昇格基準をどうするか

A 昇進基準をどうするか

  実際には、企業規模によりますが、評価制度を作るのに2週間、賃金制度に1週間、昇格・昇進制度の作成と、全体のバランス調整に1週間くらいが目安になります。

 ダラダラと時間もかけて作るより、一気に作ってしまって、運用しながら不都合点あれば見直しするというやり方の方が、早く自社にあった制度ができます。

 それでは、まず「評価制度」から進めていきましょう。

 

 
    47.評価制度の位置づけ  
    1.評価制度の意味

 評価制度の評価基準は、決して昇給や賞与を決めるための基準ではないということを肝に銘じる必要があります。 会社の価値を高め、業績を伸ばし発展していくために、期待されることを明確にしたものが評価基準ということができます。

2.評価基準と評価項目

評価基準は会社が社員に対して期待していること、上司が部下に対して期待していることを書き表したものです。すなわち、会社の価値を高め、業績を伸ばし発展していくために、期待されることを明確にしたものが評価基準であるということになります。

@ 期待成果と期待行動
 期待役割は「どのような成果を出すか」という期待成果と「その成果を出すためにどのように行動するか」という期待行動と二つに分けることができます。

A 知識・技術
 期待通りの成果、期待通りの遂行レベルを維持するために、必要な知識、技術を身に付け、必要な時に必要な行動をとってほしいという期待があります。

B 勤務態度
 専門知識、技術だけでなく、組織人として当然守ってほしい規律や協調性なども身に付けて欲しいという期待があります。

3.指導に結びつける

 成績の優秀な社員はただ単に「やる気」があるだけでなく、よい成績が出るような「仕事の仕方」をしているはずです。その優秀な社員のよい仕事の仕方を見つけて、それを評価基準の「期待行動」の欄に記述して公開することで、他の社員も優秀な成績を上げるための仕事の仕方がわかり、それを実行することで、優秀な社員に変わっていきます。これこそが、会社として「成果を上げるコツ」なのです。

「金銭をエサにやる気を出させる」のではなく、成果の出る仕事の進め方を見つけて、それを実行するように仕向けることで、成果を上げるということが大事なのです。

@ 日ごろの指導・育成
 結果だけを見て、後から「〜だからダメなのだ」と言っても手遅れです。

A フィードバックによる指導
 本人へのフィードバックは、「だから賞与が多い」とか「昇給が多い」という処遇の話ではなく、事実を捉えてよかった点、いたらなかった点を確認します。その上で、「なぜうまく行ったのか」、「なぜうまく行かなかったのか」の理由・原因を明確にし、今後の指導育成ポイントとしていきます。

4.処遇への活用

 処遇とは「賃金改定、賞与、昇格・昇進」のことを指しますが、この処遇への活用については、評価結果と処遇制度との連動性を明確にし、その関連性を公開した上で運用するようにします。

5.管理監督者としての役割として人事評価

 どのような人事制度であろうが、管理監督者には次のような役割があり、その役割を全うする義務と責任があります。

仕事の管理 部下の管理・指導育成 報告 上司の補佐・意見具申
関連部署との調整 業務の改善 担当業務の遂行 職場方針の設定と浸透

 人事評価は管理監督者の役割を全うするためのひとつのツール(手段、方法)です。

6.評価制度をしっかり行うための要件

@ 評価制度をしっかり作る

A 評価基準を明確にする

B 評価ルールを明確にする

C その評価ルールをしっかり浸透させる

D 事実に基づいて評価する

→ 部下の評価をする上司として、管理監督者としての意識が高いことが大前提です。

  ・ 評価者自身が評価されるということを自覚する。
  ・ 部下の指導責任を自覚する。
  ・ 管理監督者としての、役割や心構えをしっかり植えつけ、経営意識を高める。

 次回は、評価制度の作り方です。

 

 
    48.評価制度作成の基本  
    まず、最初に取り掛かるのは評価制度です。決めることは次の5点です。

1.何を評価するのか・・・評価項目、評価基準

2.どのように評価するのか・・・ 評価の方法、評価ルール

3.誰が評価するのか・・・ 評価者と被評価者の区分

4.どのように評価点を計算するのか・・・ 評価項目のウエイト

5.評価結果は何に反映されるのか・・・ 指導育成への反映、総合評価の決定

 この中の「@ 何を評価するのか」と「C どのように評価点を計算するのか」は評価シートを作成することで完了します。自社の実情にあった独自のものを作る必要があります。

  「A どのように評価するのか」は一般的な評価ルールがありますので、それをベースにすればよいでしょう。あまり自社用に変更すると整合性が取れなくなりますので、最初は一般的なルールで行い、どうしても不都合があれば、その時点で変更するようにするのが良いと思います。

  「B 誰が評価するのか」についても、一般的な考えがありますので、それを具体的に自社の組織に当てはめればよいと思います。

  「D 評価結果は何に反映されるのか」については、処遇制度との連携になりますが、ここでは処遇に活用するための総合評価の決定の仕方を明確にしておくことが必要です。

 

 
    49.何を評価するのか  
   

 「何を評価するのか。」これは、会社が社員に何を求めているかを考えれば、明確になります。

普通に考えれば、まず「期待通りの成果を出して欲しい」という期待があります。これを期待成果といいます。

しかし、結果だけ求めたのでは、社員は成長しません。やはり、期待通りの成果を上げるためには、それに見合った行動をしなければいけません。成果の出ない社員に「やる気だ、根性だ」といっても、成果は出ません。成果を上げるためには、成果を上げるための行動が必要です。これを期待行動といいます。その「成果を上げるための行動」とは何かを、社内で明確にし、それをみんなができるように指導することで全体の成果が上がるのです。

したがって、「高い成果を上げるために、やるべきことをしっかりやって欲しい」という、期待行動は業績向上のためには、不可欠な評価項目となります。

また、期待行動を実行しようと思っても、それを行うだけの知識や技術がないとできません。当然、会社ももっと知識をつけて欲しい、もっと技術を磨いて欲しいと期待しているでしょうから、知識・技術も評価項目に入ります。

それから、組織人として当然守ってほしい規律や協調性なども必要になってきます。そんなことは、我が社ではみなできているという意見もあるかもしれませんが、今後新入社員も入ることでしょうし、一旦、評価項目に入れて、全員が問題ない勤務態度になれば、あとではずせばよいわけですから、最初は項目に入れておいた方がよろしいと思います。

このように考えると、次の4点が考課項目になります。

項目 会社からの期待
期待成果 「期待通りの成果を出して欲しい」
期待行動 「高い成果を上げるために、やるべきことをしっかりやって欲しい」
知識・技術 「期待行動をしっかり実行するための知識・技術を身につけて欲しい」
勤務態度 「組織人としてふさわしい勤務態度であって欲しい」

これらの期待項目を書き表したものが「評価シート」になるわけです。

 

 
    50.期待成果とは  
   

期待成果とは、会社として「期待通りの成果を出して欲しい」内容と書きましたが、成果とは何でしょう。

営業であれば、売上高、粗利額などすぐイメージがつきますが、総務の成果とは、一般事務の成果とは何でしょう。

 普通に考えれば、成果とは「活動を行った結果」であり、例えば、営業活動ではなく、営業活動を行った結果としての売上高や粗利額を成果といいます。営業活動すること自体を成果ということはありません。

 そう考えると、総務などスタッフ部門にも業務を行うことだけではなく、その結果どのような成果を出すのかを明確にすることが必要です。事務処理をすばやく行うとか、ミスなく行うことが成果ではありません。それらを行った結果として会社にどのような貢献をしたかが成果ということになります。

 各部門は会社の収益向上のために存続しており、そのために何を行いどのような成果を生み出すかという観点で部門の役割を明確にします。一般的には次の分野での役割があります。  

項目  

内容・例  

1 収益性

粗利益、利益率、経費、コスト削減、回転率、ロス率など  

2 市場での地位

売上高、マーケットシェア、製品サービスの品質、ブランド力など

3 生産性  

業務効率、業務プロセス改善、一人当たりの生産性、時間外労働など  

4 イノベーション  

新商品売上、新規顧客開拓、新システム導入など  

5 顧客サービス  

顧客満足度、リピート購買率、顧客維持率、顧客シェアなど

6 人材育成

新スキル獲得、業務時間、成約率など  

(顧客サービスは社外の顧客だけでなく、社内の顧客も対象になります。)

 まず、部門の期待成果を明確にすることが必要です。  

● 期待成果明確化のためのポイント

何のために、その部門、その部署があるのか、という観点で考えていけば、部門の使命は判明します。

 期待成果は「行うこと」ではなく、「行った結果、どんないいこと」があるのか、という風に考えます。

「何をするか」ではなく「どういった成果が求められているか」を取り上げるということです。

従来、職務記述書(職務分掌)などによって職務内容を示してはいましたが、成果については記述されていないのが普通でした。期待役割とはその成果の部分を明確にしたものであるということができます。

 人事制度云々ではなく、企業として当然明確にしていく必要があるものです。

 目標管理制度を導入するにしても、この期待成果が明確になっていないと、うまく運用できません。