■ 人事制度の基本 8 |
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1.残業問題の実態 ◆ 経営側 残業等による時間外手当の増大が、企業経営を圧迫している。 ◆ 労働者 残業規制等により、サービス残業を余儀なくされている。 ◆ 行政 労働基準監督署によるサービス残業についての是正指導が増えている。
2.残業問題解消の方向性 ◆ 管理体制の見直し(仕事の与え方、管理者の意識、労働者の意識の変革など) ◆ 制度の見直し(評価制度の明確化、裁量労働制等の導入検討) ◆ 賃金制度の見直し(業績連動賞与の導入など) 3.残業問題解消の考え方 ● 残業には、どうしても必要な残業と必要のない残業がある。それを同列に考えて対応することはできない。まず、管理者に対して、仕事の与え方や残業管理を徹底させる必要がある。必要のない残業はやらせないことを実行し、さらに、必要な残業を仕事の配分方法の改善や部下指導により減らすようにする必要がある。そして、誰がどのような仕事でどれだけ残業できるかを、管理者が把握できるようになってはじめて、裁量労働制などの導入が可能となる。 ● また、労働者に対しては残業を減らした方がメリットがあるような仕組みにする必要がある。 残業を減らして、残業代が減るだけであれば、残業した方が得だと考える労働者がいても不思議ではない。このような仕組みの中で、改善しろ、残業するなといっても、自分が不利になることに一生懸命になるわけがない。やはり、評価制度と業績連動賞与の導入により、業務改善をして残業を減らし会社の業績をよくすれば、結果的に自分の収入も増えるということが、目に見えてわかるようにする必要がある。残業を減らすことが労使ともにメリットがあるという、仕組みづくりが先決である。
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最近、人事考課を目標管理(評価連動型)と行動評価で構成する会社が増えています。実は、当社もそのように行っています。以下に評価制度の概略と行動評価表を紹介します。 ● 当社の人事考課は仕事の結果を判断する「成績評価」とその結果にいたるまでのプロセス即ち実際の行動を評価する「行動評価」で構成されます。 ● 行動評価は、「当社の社員のあるべき行動」あるいは「優秀社員の行動」を指針の形で基準化し、その行動指針に則った行動をしているかどうかを評価するという方法で行います。 ● この行動評価の基準は考課用紙に記載されています。 ● 行動評価はより公平性納得性を高めるため自己評価を行い、話し合いのうえで決定するようにします。 ● 行動評価の結果は処遇に活用するだけでなく、その後の指導育成に役立てます。
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1. 人事制度は運用して初めて価値がある。← 導入しただけではダメ 機械設備も稼動して初めて成果を生み出す。導入しただけでは何も成果は生み出さない。 2. 業績が出るようになる人事制度が良い制度である。← 新しい制度が良いとは限らない 社員をやる気にさせ、社員が成長し、その結果、業績が上がるような制度が良い制度。 3. 自社の実情に合った制度を考える。 ← 最新の制度が良いとは限らない 同じ業種、同じ規模であっても、会社によってそれぞれ解決すべき課題が違う。 4. シンプルな制度が一番よい。 ← 理解できないと運用できない 人事制度は社員に対する「あるべき姿のメッセージ」。社員が理解できない制度は意味がない。 社長と人事担当者しか理解できないような人事制度はダメ。 5. 人事制度を賃下げの道具に使わない。 ← 業績低下の原因は他にある 業績の低下は社員の責任ではない。商品や産業のライフサイクル、事業領域、事業の仕方の問題の方が大きい。 6. 人件費総枠を増やすことを目的とする。← 個人評価だけでは組織風土の崩壊の恐れ 会社業績を意識するような仕組みを作る。 7. 絶対評価で行う。 ← 相対評価では、良いやり方を他人には教えない 差をつけることや競争主義を強調すると、良い仕事の仕方やノウハウを他人には教えなくなってくる。会社としての仕事の水準がレベルアップしなくなる。 8. 勇気を持って評価フィードバックをする。 ← 評価結果がわからないから納得しない 社員は評価に不満があるのではない。評価結果をはっきり知らされないことに不満・不安がある。 上司が逃げずに「部下の不満」を聞いて、評価のすりあわせを行う。これが育成につながる。 9. 評価することが目的ではない。 ← その後の指導が大事である 評価によりできない点を明確にし、そこを指導することが、評価の目的である。 10. 人事制度は「人を育てる仕組み」である。 → 業績向上につながる。 人事制度の効果的運用の仕方についてはこちらへ |
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1.等級数の決め方 職能資格制度における『等級』とは、企業が社員に対して要求している職務遂行能力を難易度順に並べ、段階区分したものである。 一般的には、その企業の現状と将来を勘案し次のようにして暫定的に決定し、職能要件書等を作成する中で、妥当性を検討し最終決定する。 @ 初級・中級・上級の3つのクラスに分け、まず、初級クラスについて考える。 入社数年間の社員に対して要求するレベルはいくつに区分できるかを考えると、最低でも、高卒・短大卒・大卒の3つは必要である。場合によっては中卒を入れて4つという事も考えられる。 A 上級クラスについて、自社の管理職の役職の段階を調べる。 この場合、組織管理上必要なもので計算し、ポスト不足や営業上便宜的に設けられた役職は計算に入れない。この様にして調べた段階数をそのまま使うか、現状の上級者にさらなる能力開発を促す意味でもう一つ上に1等級つけ加える。 B 中級クラスは、上記@とAの中間クラスに対して要求するレベルでる。 これも自社の管理職手前の役職の段階を調べ、その段階にプラス1をしたものを等級数とする。また、このクラスにおいて、高年齢化や・長期勤続化が進んでいる場合はさらにプラス1することもできる。 以上のように設定すると、 2.モデル滞留年数の決め方 1つ上の等級に上がるまでに要する年数を『滞留年数』といい、企業の期待通りの能力レベルの定期採用入社者が、期待通りに能力を高め続けた場合の滞留年数をモデル滞留年数という。これは賃金表を作成する上で非常に大事ものである。 @ 初級クラスのモデル滞留年数 能力開発を主眼においた制度の趣旨から、学歴を理由に賃金の差をつけることは好ましくなく、高卒で入社し2年間実務能力を磨いた者と、短大で2年間学んだ者との能力レベルは同等であり、高卒で入社し4年間、短大卒で入社し2年間実務能力を磨いた者と大学で4年間学んだ者との能力レベルはほぼ同等であると考える。 A 中級クラスのモデル滞留年数 自社において、期待通りの能力レベルの定期入社者が、期待通りに能力を高め続けた場合に、課長に対応する等級に達するまで何年かかるかを、推定する。 B 上級クラスのモデル滞留年数 上記Aと同じ様に『部長対応等級到達のモデル勤続年数』を求め、上位等級の滞留年数は、下位等級の滞留年数より少なくならないというルールに基づき決定する。なお、最上位の等級のモデル滞留年数は定める必要はない。 C モデル年齢の決め方 定期入社者がモデル滞留年数の通りに昇格し続けた場合の、それぞれの等級に滞留しているときの年齢をモデル年齢という。
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1.人事考課の位置づけ 人事考課の考課基準は、会社が社員に対して期待していること、上司が部下に対して期待していることを書き表したものである。決して昇給や賞与を決めるための基準ではないということを肝に銘じる必要がある。 会社の価値を高め、業績を伸ばし発展していくために、期待されることを明確にしたものが、考課基準である。 2.人事制度で業績を上げるとは 成績の優秀な社員はただ単に「やる気」があるだけでなく、よい成績が出るような「仕事の仕方」をしているはずである。その優秀な社員のよい仕事の仕方を見つけて、それを考課基準して記述して公開する。そうすることで、他の社員も優秀な成績を上げるための仕事の仕方がわかり、それを実行することで、優秀な社員に変わっていく。これこそが、会社として「成果を上げるコツ」なのである。 人事制度で成果を上げるというと、「金銭をエサにやる気を出させる」とイメージする人がいますが、そうではなく、成果の出る仕事の進め方を見つけて公開すること、またそれを考課基準に入れることが、成果につながるということなのである。 3.みなハッピーになる賃金制度 取り合いの賃金制度、賞与制度では、協力体制やノウハウの共有化はできない。みんなが頑張れば、みんながよくなる仕組みにして、みんなが頑張るように働きかけするような仕組みにする。 金銭による極端な「アメとムチ」の賃金制度は、すぐ止める。 ● 人事面から見た業績向上のメカニズム
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