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  人事制度の基本 6

 
   

26.職務給の導入

 
   

 職務給とは
 同一職務同一賃金が原則(年齢、勤続、能力に関係しない)
 定期昇給はない。仕事が変わると賃金が変わる。
 高い職務につけば賃金も上がる。(欠員が出たら上がる)
 低い職務につけば賃金も下がる。(評価が悪い場合など)

 日本流にアレンジ
 細分化した単一職務給
      ⇒ 幅を持たせたジョブグレードを設定
 職務調査による詳細な職務基準 ⇒ 簡易職務評価

職能資格制度

 

職務資格制度
(ジョブ・グレード制)

社員一人一人の保有能力をベースとする

基本要件

企業から見た職務価値をベースとする

能力がベースとなるため、発揮しなくても評価される

特徴

職務価値と業務の成果が評価される

能力が高まれば昇格する。降格はない。上位等級の者が多くなり、ポスト不足となる。

昇格
任用

組織が必要とする職務やポストには制限があり欠員がある場合昇格または任用する。ぷストがなくなれば離脱する

習熟昇給と昇格昇給により昇給する。右肩上がりとなる。

賃金

定期昇給はない。
同一職務、同一賃金。

上位等級者が簡単な仕事をしても高賃金を支給する。同一職務で賃金格差が出る

問題点

 

簡単な仕事を担当すれば、賃金は低くなる。職務異動で賃金が上下する

若年者の多い場合に適する

メリット

人件費の自動膨張がない


● もっと詳しく知りたい。実際の導入を検討したい方は → こちらへ

 

 
   

27.これからの賞与

 
   

◆ 制度改定の背景

1 賞与の意義の変化

今までの考え方

これからの考え方

賃金の後払い
生計費の補てん
年間賃金の調整
恩恵(経営者の裁量)
労働意欲の刺激
利益分配

利益配分・成果配分
→ 賞与総原資の決定方法の明確化

労働意欲の刺激
→ 配分ルールの明確化

2 働く人の価値観の変化

今まで

これから

平等主義
みんなと一緒がよかった。
へんに差をつけて波風を立てるより、
みんな一緒のほうが、うまくいった。

公平主義
頑張ったら頑張った分だけほしい。
これだけ頑張ったのにみんなと一緒はおかしい。公正に評価してほしい。

3 賞与の特徴

 月例賃金は、大幅に上げたり下げたりすることがしにくい。
また、月例賃金は、生活給的な部分があり、能力や業績をストレートに反映しにくい。
しかし、賞与は生活給的な部分が若干あるにしても、月例賃金ほど制約はなく、変動性がある。

◆ 賞与制度改定の概要

1 賞与総原資の決定方法の明確化

 社員の努力や業績が賞与総原資にどのように反映するかを明確にする。

2 個人への配分方法の明確化

 社員個人の努力や業績が個人の賞与にどのように反映するか明確にする。

3 評価基準と評価方法の明確化

 社員の努力や業績をどのように評価するか明確にする。

4  移行処置の検討

 今までの支給方法と比較し、計算方法の変更による極端な増減がないように移行措置を検討する。(評価の結果による増減はあって当然である。)

◆ 賞与総原資の決定の方法

1 成果配分方式で考える

 一定期間において、企業が上げた業績の一部を、貢献の度合いに応じて社員に配分する(賞与に上乗せする)、あるいは、賞与総原資とするという方式で考える。
 事前に基準と割合を社員に明示することが必要である。
 また、経営数字についても、社員に対してガラス張りにしないと、信頼を得られない。

2 いろいろな成果配分方式

●  売上高基準
 
(当期売上高×平均売上高対人件費率−当期既払人件費)×一定率=賞与総原資
 (実際の売上高−予算売上高)×一定率=通常賞与に加算する額

例 従業員50人のA社
 (実際の売上高−予算売上高)×3%=通常賞与に加算する額
 売上予算30億円に対して実際の売上32億円
 600万円が賞与追加原資(一人当たり12万円上乗せ)
 売上予算は前期末に売上計画を作成し、労使で合意

● 付加価値基準 ← kana_3おすすめ
 当期付加価値×平均(標準)労働分配率−当期既払人件費=賞与総原資

例 従業員100人のB社
 今期売上高40億円、付加価値率25%、平均労働分配率44%の場合
 一人当たりの平均賃金年間320万円
 40億×25%×44%−(320万×100人)=1.2億円
  
2億÷100人=120万円=一人当たりの平均賞与支給額
 上記式で、当期既払人件費に最低保証の賞与分も含めば
  当期付加価値×平均(標準)労働分配率−当期既払人件費=成果配分額

● 営業利益基準
 6カ月間の営業利益×一定配分率=6カ月間の成果配分額

● 経常利益基準
 当期経常利益×(1−税率)×一定配分率(1/3)=当期の成果配分額
 当期経常利益×一定配分率(1/4)=当期の成果配分額

● もっと詳しく知りたい。実際の導入を検討したい方は → こちらへ

 

 
   

28.退職金制度の見直し

 
   

1.退職金を取り巻く環境
 1 勤続年数の長期化
 2 団塊の世代の定年退職ラッシュ
 3 積み立ての不足・予定利率引下げによる支払い増加
 4 賃金連動型の退職金計算による退職金額の高騰

2.見直しのポイント
 1 退職金額決定方式をどうするか
 2 退職金の支払い金の準備をどうするか
 3 そもそも退職金は必要か

3.退職金制度改定の基本発想
 当社にとって退職金制度は価値あるのか?
 1 従業員の長期勤続を奨励するのか?
 2 限られた賃金原資をもっと有効に使えないのか?
 3 退職金は将来の債務になるがかまわないのか?
 4 退職金にも貢献度を反映させるのか?
 5 廃止した場合、求人などで不利にならないのか?

4.退職金制度改定の方向性
 1 退職金制度に積極的な価値が見出せない  → 廃止する
 2 退職金制度は存続させたい  → 別テーブル制
 3 退職金に貢献度を反映させたい  → ポイント制
 4 退職金は残したいが債務は残したくない   → 中退共、特退共、確定拠出

5.退職金変更の法的実務
 1 既得権を保証することが大前提
   賃金連動型の場合、「現在の基準金額×定年退職時の支給係数」は最低保障する。
 2 合理的理由、社員の不利益への配慮が必要
 3 労使で話し合い、同意を得る

 

 
   

29.これからの人事制度 10ポイント

 
   

 「売上を伸ばして利益を上げる」という発想では、このデフレ時代は生き残れない!
                             経費+利益=売上 ← インフレ時代の発想

 売上が横ばいでも、仮に10%落ち込んでも利益が出る仕組みつくりが必要!
                             売上−利益=経費 ← デフレ下の発想

 デフレ時代の利益確保の方向は次の3つである。
   1 経費の削減
   2 原価の低減
   3 在庫の削減
 これらを実現し、さらに売上が伸びれば利益は飛躍的に伸びるはず。

 これらを実現するためのヒントは次の通りである。
 1 原価の低減の一つの方法として、仕入れ担当者を変える、または、仕入先を変えることでかなりのかなりの削減が可能。
 2 在庫の削減については、倉庫を小さくする、在庫担当者を変えるなどの方法で効果を上げている会社がある。
 3 経費の削減については、その中の大きなウエイトを占める人件費のコントロールが不可欠。

 そして、この人件費をコントロールするためには、人事制度の見直しが必要であり、そのためのポイントは次の通りである。

これからの人事制度のあり方 10のポイント

1 総人件費は会社の業績に連動するようにする。賞与を調整弁とする。
2 管理職の賃金はアップダウンのある年俸制、非管理職は職務給を採用する
            (賃金自動膨張装置つきの職能給や年功制は廃止する)
3 役職についてはその役割と成果責任を明確にする。
4 評価は目標管理とコンピテンシーにより行う。基準を明確にし公開する。
5 能力開発のため多面評価を採用する。
6 適性に応じた配置・昇進と教育を行う。
       (知識・技能の能力開発は教育できるが、リーダーシップの開発は難しい)
7 公正な評価、効果的な能力活用により、やる気のでる・働き甲斐のある仕組みを作る。
8 退職金は廃止または前払い・確定拠出型を採用し、確定給付型は早くやめる。
9 時間外手当については、みなし労働・裁量労働を検討する。フレックスタイム制も検討。
10 人事は「人件費を減らして、仕事がまわるような仕組みを作ること」という認識を徹底する。
                              (人件費対利益の向上を目指す)


 相手のある交渉(売り込みや仕入の値下げ)で利益を上げるよりは、社内の人件費をコントロールするほうがずっと現実的である。経営者がその気になれば、即実行でき、即利益体質になる。

 内部の体質強化をしないで、売上売上と叫んでも生き残れない。
はやく「利益の出る組織」つくりに取り組むことが、生き残る道である。

 これに気づいている経営者、役員、人事担当の方は即ご連絡を! ⇒ こちらへ

 

 
   

30.評価セミナーのテキスト

 
   

 今日4月4日、高崎商工会議所で評価制度のセミナーを行いました。
3時間のセミナーで、さわりの部分だけだったのですが、そのときに使ったテキストを公開します。
このHPに書いてある内容と重複する部分が多いのですが、興味があって参加できなかったか方はどうぞ参考にしてください。

 pdfファイルです。4月24日セミナーテキスト

 

 
    31.成果主義の見直し  
     成果主義の導入ということで、目標管理1本で業績評価を行っている企業が、まだ見受けられるが、次のような点から見直しを図った方がよい。

1.目標管理一本で評価することは、個人目標、部門目標だけの達成を考えてしまい、他部門との連携や全社最適を考えなくなってしまう恐れがある。

2.目標管理(業績目標)一本で評価することは、結果を出すためのプロセスを顧みず、結果主義になってしまう恐れがある。仕事の進め方やノウハウの蓄積がおろそかになってしまう。

3.目標管理一本で評価することは、多くの場合数値目標になり明確に評価できることになるが、結果だけで評価することになる。結果というのは、本人の能力・努力だけでなく、ラッキーアンラッキーに左右されることが多く、本人の能力・努力などが反映されない恐れがある。

 さらに、企業によっては、その目標管理自体がうまく機能しておらず、成果主義に対する不信感が高まっている状況がある。

1.アカンタビリティ(成果責任)を明確にした上で、業績目標を設定することになっていても、部署によっては、遂行目標(いつまでに〜〜を実行する)を設定している。

2.アカンタビリティ(成果責任)とは、本来の役割についてその成果責任を明確にしたものであるが、本来の役割ではなく、課題を目標に設定している場合がある。

 見直しの一つとして、次のような改善策が考えられる。

1.本来の役割に関してのアカンタビリティ(成果責任)を明確にした上で、それに関して「どのような成果を上げるか」という業績目標と、その成果を上げるために「どのようなことを実施するか」という遂行目標を区別して記述するようにする。

2.上記、業績目標、遂行目標の達成水準は経営目標に貢献できる水準とする。

3.さらに、チャレンジ目標として、経営方針等に基づいた課題を設定する。

4.目標管理一本ではなく、管理行動および勤務態度に関するプロセス(行動)の評価も行い、結果主義・競争主義にならないようにする。

5.処遇に連動する歳には、取り合いにならないように、工夫する。頑張って会社の業績がよくならば、みなハッピーになるようにする。

6.すなわち、個人の評価よりも会社の業績を上げることが最優先である、ということを明確にする必要がある。

 

 
    32.人事考課制度構築の前に  
    1.人事考課と処遇は別物

 人事考課と「処遇のため評価区分」と区別して考えることが必要である。

 人事考課は、部下の仕事ぶりや仕事の結果を考課し、よいところは認めて、さらに仕事に活用するようにし、いけない点は指導して、よい仕事をするように仕向けていくために行うものであり、処遇とは関係なく、管理監督者が当然行うべきことである。

 処遇のための評価区分とは、人事考課した結果を点数化し総合点を出して、その点数により、処遇上の評価段階を決める、ということである。

2.本末転倒

 「人材育成と会社の業績を上げるために人事考課を行い、その結果を処遇に活用する。」ということであり、「処遇に活用するために人事考課を行う」ことではないということをしっかり認識することが必要である。

3.失敗しないために

 人事考課と「処遇のための評価区分」を切り離して考えることで、管理ツールである人事考課が機能するのであり、「処遇のための人事考課」を行っている限り、人事考課は機能しないことになる。

 人事考課は「処遇を決める点数付け」ではないということを、しっかり認識すべきである。

 
 
    33.成果主義の問題点  
     成果主義を導入している企業や導入を目指している企業と接する機会が多いが、その成果主義について、疑問に思うことがある。本当に成果主義がいいのだろうか?

1.成果主義という考え方の問題

  金銭の「アメとムチ」による管理が長期的に本当に機能するのか。  社員による金銭の「取り合い」が本当に企業の発展に結びつくのか。  今の経営者は「金銭を目的」に仕事をしてきたではなく、「金銭は結果であり、よい仕事をすること」が目的だったのではないだろうか。なぜ、「金銭を目的」にするような、仕組みを導入する必要があるのだろう。

2.成果主義の運用上の問題点

  経営者に成果主義を適用しないで、社員にのみ成果主義を適用するのはおかしいのではないか。  
 評価の納得性を確保できるのだろうか。
  誰もが納得する評価の基準を示すことができるのだろうか。

3.私の考え

  年功制や能力主義もいろいろ問題がある。やはり、これからは仕事(職務)主義をベースする方がよいと思う。