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      退職金制度の見直し 3  
     11.役員の退職慰労金制度  
    ◆ 退職慰労金の基礎知識

1 社員の退職金との違い
 社員の退職金はその制度がある以上会社には支払いの義務があります。役員の退職慰労金については株主の総会の決議が必要であり、決議がなければ支給されません。

2 損金経理
 退職慰労金額が確定した期において、損金経理することで損金とすることができ、また、支給されたほうも退職所得として処理でききます。
 ただし、金額が不当に高額であった場合などは、その高額部分については、損金扱いできません。役員賞与と同じ扱いになります。
 高額はどうかは、1)在職期間 2)退職の事情 3)同業種で同規模の会社の役員退職慰労金金支給状況などにより判断されます。

◆ 退職慰労金の計算方式

 役員の退職慰労金の計算は大別して2通りの方法があります。

1 功績倍率方式
  計算式= 退職時の最終報酬月額 × 役員の在任年数 × 功績倍率
 例1 退職時の役職が社長であり、そのときの報酬が月額120万円、役員としての勤続が25年の場合
 120万円 × 25年 × 3倍(社長) = 9000万円
  社長3倍、専務2.5倍など功績倍率を別途決定する。

2 役位別評価方式
  計算式=( 役位別最終月額報酬 × 役位別在任年数 × 役位別功績倍率 )の累積額
 例2 取締役(報酬50万円)3年、専務(報酬100万円)5年、社長(報酬120万円)17年で退職した場合
取締役 =  50万円 ×  3年 ×  2倍 =  300万円 :A
 専務 = 100万円 ×  5年 ×2.5倍 = 1250万円 :B
 社長 = 120万円 × 17年 ×  3倍 = 6120万円 :C
        A + B + C = 合計役員退職金 = 7670万円
 功績倍率は 会長・社長=3倍 専務=2.5倍 常務=2.2倍 取締役=2.0倍などとする。

◆ 使用人兼務役員の扱い

1 使用人役員就任時に社員としての退職金を支給する方法

2 使用人を外れた時点で、社員に対する退職金を支給する方法

 など、会社の事情に合わせて決定します。(統一しておくことが必要です。)

 

 
    12.改正高齢者雇用安定法への対応  
     平成16年の改正により、65歳までの雇用延長を段階的に進めることがが義務化された。
(施行日の平成18年4月1日から直ちに65歳までの雇用延長が義務付けられるものではなく、平成25年度までに段階的に雇用延長の年齢を引き上げていくことになっている。)

 そこで、対応の選択について考えてみる。

1.65歳までの雇用延長の方法

 ・ 定年年齢の引上げ
 ・ 継続雇用の導入
 ・ 定年制の廃止

2.継続雇用を導入する場合

勤務延長

定年年齢に達したものを退職させずに引き続き雇用する制度。

 ・       雇用契約の継続
        退職金は勤務延長期間終了後に支給

再雇用制度

定年年齢に達したものを一旦退職させ、再び故郷する制度

 ・       雇用契約を新たに結ぶ
        退職金は定年退職時に支給

3.さらに、対象者の選別について

希望者全員を対象とする 職務、働き方、賃金など労働条件が双方納得した場合
対象者を選別する 選別の基準を労使協定にて決定する。(就業規則にて規定も)(3年間or5年間)客観的な基準が必要

4.高齢者を活用するのにふさわしい業務は何か

 ・ 肉体的負担が少ない軽作業
 ・ 定年前と同じような作業
 ・ 経験を生かした指導業務 など

5.高齢者の職業能力に応じた区分をどうするか

 個々の高齢者のばらつきが大きすぎ、全員を一律の処遇するのは難しい。

 ・ 専門技術はないが、心身とも健康である
 ・ 一定の作業については熟練している
 ・ 専門知識、専門技術を持っている。 など

6.高齢者の働き方に応じた区分をどうするか

 ・ 週3日くらいのパートタイマーとして働きたい
 ・ フルタイムで今までどおり働きたい

7.賃金等の処遇をどうするか

 担当する職務内容、本人の能力、勤務時間に応じて検討する

 ・ 定額時給800円〜1,000
 ・ 退職時の60%程度
 ・ 退職時と同程度

8. 公的年金、助成金の活用をどうするか

 ・ 在職老齢年金
 ・ 高年齢雇用継続給付金

 ・ 継続雇用定着促進助成金
 ・ 在職者求職活動支援助成金
 ・ 移動高年齢者等雇用安定助成金
 ・ 高年齢者等共同就業機会創出助成金

9.意思確認をどうするか

   50歳代での意思確認
  57歳時点での継続雇用の意思確認と職務や労働時間の希望確認

 ・再雇用条件の提示
  定年退職6ヶ月前に、職務内容や労働条件の提示を行い合意形成する

10.呼び方、契約期間、など

 ・ 雇用延長(再雇用)者の呼び方をどうするか

 

 改正高年齢者雇用安定法Q&A

 

 
    13.トヨタの再雇用制度  
    1.65歳まで 定年退職者対象に

 トヨタ自動車は、来年四月からすべての定年退職者を対象に最高六十五歳まで働ける新たな再雇用制度を導入することを決めたそうだ。 従来の再雇用制度は製造部門の係長クラスまでに対象を限定していたが、適用対象は事務職を含む全従業員に拡大するということだ。

 新制度は希望者が一年ごとに雇用契約を結ぶ方式で、導入当初は63歳まで。以後は年金の支給開始年齢引き上げに連動させて延長、2013年には65歳まで引き上げる。

選考基準は、 @ 健康 A 職務遂行能力・技能 B チームワーク・職務態度−という評価基準に達しているかどうかを五十五歳以降に毎年確認し、六十歳の定年を迎えた段階で基準を満たした従業員だけ再雇用する。定員は設けない。年収は定年前の半分程度になる。

 雇用延長のひとつの見本になるのではないだろう。

2.介護で退職しても職場復帰

 8月1日、同日から事務・技術系の専門職以上を対象にした「プロキャリア・カムバック制度」を導入したと発表した。
 配偶者の転勤や長期の介護のために退職しても、原則再入社でき元の職場に復帰できる。

  この制度の対象となるのは入社後3年経過し、かつ専門職として1年以上の経験がある人。退職の理由は配偶者の転勤と介護に限定する。

  介護の場合は2年の休職制度がすでにあり、これを超えて介護が必要な場合に、この制度が活用できる。男女を問わないが、夫の転勤で止む無く一時的に退職するケースなど女性にとって歓迎される制度となりそうだ。
 退職期間に制限はなく、本人が希望する時期に再雇用申請できる。

 

 
    14.ポイント制への変更の意味  
     HPの内容によりますと、退職金制度を今後どのようにするにせよ、現行の (基本給x勤続年数)等の退職金の算出方法をポイント制等の新たな算定方法に見直すべきとのことです。
 しかしながら、現行制度を確定拠出金型に変更する場合、退職金の運用のリスクを負うのは従業員自身となるため、ポイント制等の、言わば企業への貢献度に配慮するような制度は不要とるような気がしますが、如何でしょうか?

 確かに、(基本給x勤続年数)等の退職金の計算方式をポイント制にしたほうがよいと思います。理由は

@ 退職までの途中の貢献(等級の高さ)が退職金に反映する。
A 現行制度から移行しやすい。
B 将来、確定拠出年金や退職金前払い制度に移行しやすい。
C ポイントの設定により、退職金カーブを意図的に設計できる。
 です。

 その中で、確定拠出にする場合は ポイント制であれば毎年の加算ポイント(加算金額)が明確になっているため、 スムーズに移行できる。という利点があります。
 すなわち、いくら拠出するかがポイント制であれば、すぐ計算できるといことです。
 拠出した後の運用は従業員の自己責任になりますが、いくら拠出するかは、 会社の方で、勤続や等級に応じて決める必要上がります。(同じでもいいですが) その場合、ポイント制であれば、1年間に増加するポイント分を拠出すればいいわけですから、簡単に移行できます。

 もちろん、(基本給x勤続年数)等の計算式から、拠出金額を算出することができます。
確定拠出に移行することが決まっているのであれば、即、等級ごとによる拠出額を決定すればよいと思います。

 このHPで書いているのは、確定拠出にするかどうか、他企業の状況を見極めたい場合は 一旦ポイント制にしておけば、その後、どのような制度に移行するにしても スムーズに移行できます、というような意味で書いてあります。

 私は個人的には、先払い方式(退職金はなしにして、その分賃金に上乗せ)が 会社にとっても、社員にとっても一番いいと思っています。 (税金や社会保険料の問題がありますが。)