■ 賃金制度の基本 1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.賃金とは? | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
賃金とは、労働基準法では、賃金、給料、手当、賞与その他名称を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものを賃金といいます。(労基法第11条) 賃金には3つの性格があります。 第1は、「企業活動の費用」としての性格です。 企業が社員の賃金について考えていくうえで、以上の3つの性格を抜きにして考えることはできません。 賃金の決め方は、経済社会の変化とともに次第にかわってきています。 世の中の動きに応じて、自社の賃金制度を見直していくことが必要です。 そうした中で注目すべきことは、賃金をますます明確に、そして納得できるように決めなければならなくなってきたということです。 賃金制度の整備を進めるにつれて、次第にその周辺の制度の整備も必要になってきます。そして周辺の人事諸制度の整備があって初めて賃金制度は効果的となります。 とくに能力主義的な賃金とするためには人事考課制度の整備は欠かせません。
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2.公正な賃金の考え方 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
社員の賃金を決める上で考慮しなければならないいくつかの原則があります。
ひとつは「同一価値労働同一賃金の原則」であり、これはさらに3つの要素が考えられます。
もう一つは「生活保障の原則」です。これは、誰もがある一定水準以上の生活を保障されなければならないという原則で、企業にとっては「再生産コスト」として考えます。 日本における賃金制度を考える場合、生活費の原則を考慮する必要があります。 生活費への配慮が社員の安心感をもたらしているということを考えますと、生活費に全く配慮しない賃金制度というのは、日本の社会ではまだ早すぎるような気がします。 また、公正な賃金制度を確立するうえで必要なこととして、賃金制度の公開があります。賃金がどのような基準で決定され、どのような基準で改訂されるのかを明確にして、それを社員に公開しなければなりません。 さらに、賃金は企業における費用としての側面もあります。 最近とくに注意したいのは、人口の高齢化の進展とともに、労使折半負担である社会保険料の増加が予定されていることです。すなわち人件費は、たとえ賃金部分が増加しなくても着実に増加していくことが確実なのです。
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3.基本給の設計 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
基本給は、支払う賃金の基本となるもので、基本給をどのようにして決めるかが、賃金制度の骨格を決めるとともに、制度設計上で最も重要となります。
日本の企業でとくに利用されることの多いのは、職能給、職務給、職種給、生活給ですので、これらの賃金を説明します。
賃金は労働の対価であるという原則から、「仕事の要素」を反映しなければ意味がありません。 また、「仕事の業績」を反映することが公正な賃金につながるのはいうまでもありません。そこで基本給体系のなかに「仕事の業績」を反映する賃金を含めることが考えられます。 今まで多くの企業では、「職能給」を採用してきましたが、職能給の特徴は次の通りです。
○ 各賃金の補足説明
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4.賃金表と定昇・ベア | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
それぞれの基本給項目に対して、賃金表を作成する必要があります。賃金表を作成するのは、賃金管理をあいまいではなく明瞭なかたちで行うためであり、公正な賃金管理には欠かせないものです。
賃金表がないと、社員が安心して仕事のできる環境とはいえませんし、企業にとっても、賃金管理を合理的に進めていくことができません。賃金表は整備しなければならないのです。
賃金表を整備していない企業は、できるだけ早く、賃金表の整備が必要です。
よく昇給表で管理している企業がありますが、これもよくありません。昇給表は「差額」を決めているだけであり、賃金総額を管理しているわけではありません。やはり、「絶対額」で示す賃金表が必要です。 賃金表があると、定昇とベアを分けて考えることができます。 定昇をするのかしないのか、するとすればどれくらいするのか、定昇の根拠を年齢や勤続による自動定昇にするのか、能力や業績による査定定昇にするのか、制度設計においては非常に重要になってきます。 また、ベアについても、どのような根拠で行うのか、ベースダウンもあるのか、なども決めておく必要があります。
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5.年俸制の基本 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
時間的な観点で言えば、賃金の額を一年あたりで決定する制度を年俸制と呼ぶことができます。もちろん、実際の支払は、労働基準法24条2項により最低月1回の支払が必要になりますので、年俸額を分割して毎月(ボーナス月に多く振り分けることもあります)支払うことになります。(一日あたりで額を決定する日給制、一月あたりで額を決定する月給制などと同様に考えると) 実際には、賃金額を年単位で決定するというだけでなく、年俸額が、前年度の業績の評価などに基づき、労働者と上司等の間の話し合いないし交渉によって決定されるという点が特徴といえるでしょう。こうした特徴が最も極端に現れるのがプロ野球選手で(労働者かどうは別にして)、たとえば、昨シーズンの打率が3割であったなどという業績により、年俸が大きく左右されます。 こうした意味で、年俸制は、いわゆる成果主義賃金制度の典型であるといえます。 年俸制のもとでは、各労働者について毎年の目標を設定して、年度の終わりにその達成度を評価するなど、いわゆる「目標管理」が重要となります。 また、従来型の賃金制度のもとでは、職能給制度がとられる場合を含め、定期昇給により毎年賃金が上がってゆくという発想がありますが、年俸制のもとでは賃金額は毎年変動しうるので、年功賃金的な色彩は薄まります。 企業としては、いわゆる総額人件費管理という観点から、賃金総額が毎年上昇してゆくのを避けるために年俸制を導入しようとすることもあります。
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