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  評価のQ&A 23

 
   

111.職能資格での評価と職位の評価

 
   

 弊社では古くより社員一人ひとりについて職能資格等級別の資格考課表と、職位別(一般〜部長)の職位考課表を用いて、年2回の成績考課と年1回の年度考課を行っています。(資格・職位それぞれに成績・情意・能力の考課を行っています。)このような事例は他社でも見られるのでしょうか?

 一般の企業においてもそのような例に出会ったことはありません。
通常の職能資格制度で行う場合、能力考課は等級基準、成績考課は職務基準が基準になります。
  等級基準とは、資格等級ごとに求められる能力の基準であり、職務基準とは、今期実際に求められる職務内容とその成果になります。
 ですから、御社の例で言えば 能力は資格考課表、情意と成績は職位考課表を使うとよいのではないでしょうか。

 また、資格と職位の評定要素の選定で悩んでいます。職能資格のみで評価制度を構築する場合は人事評価ツール全集がとても参考になるのですが、職位考課表を併設する場合、どのように要素を選定すればよいでしょうか?行動評価を導入したいと考えています。

 職能資格制度では、ある一定の等級の中から、役職者を任命する形になっています。
役職者は能力があるとかないとかではなく、どのような成果を挙げたかが求められます。
(能力はある一定のレベルがある人の中から役職を任命する)
 したがって、職位(役職)については、その役割を明確にし、それを達成したかどうかを評価するのがよいと思います。
 資格等級は能力によって決まるわけですから、資格等級に連動した形で評価するのがよいと思います。
 情意考課は、全職員に同じように求められるものであり、等級ごとにそれほど違わないので、全職員共通または管理職と非管理職の2つくらいの分類手よろしいと思います。
 

 
   

112.退職事由係数

 
   

 退職金制度を将来ポイント制等へ移行したいと考えていますが、さしあたって「退職事由係数」を取り入れたいと思っています。退職事由係数について、考え方を教えてください。

 退職事由係数とは、自己都合退職の場合に退職金額を減じるための係数です。 通常、定年退職、会社都合退職の場合は100%とし 自己都合退職の場合は、勤務年数に応じて100%以下の係数を設定します。

 この自己都合係数の設定の意味は 「退職して欲しくない」という企業からのメッセージになります。 勤続35年でも係数が60%くらいだと、退職しにくくなります。 仕事はしたくないけれど、今やめると退職金が減るから しょうがなく勤める、ということが発生する恐れがあります。

 会社に入って、勉強中または、そのお返しをしている間は やめて欲しくないが、ある程度会社に貢献したら、 やめてもらっても、いいですよ、退職金は満額払いますよ、という意味で、勤続20年〜25年くらいで、100%に設定するような 会社が増えてきています。

 導入に際して、勤続20年〜25年で100%であれば、その前にやめなければ不利益になりませんし、勤続20年未満で退職することを予定して、勤めている人はいないでしょうから、社員によく説明すれば、理解してくれると思います。

 自己都合退職でも満額支給する勤続年数を何年にするかが、 ひとつのポイントだと思います。 30年未満、できれば20年くらいがよろしいのではないでしょうか。

 ただし、確定拠出型、または前払い型の退職金制度をお考えの場合は、退職事由係数の考え方は適用できません。
 

 
   

113.家族手当の必要性

 
   

 「成果主義なのだから、家族手当を廃止した方が良いのではないか」と、経営者から言われています。成果主義では、家族手当は必要ないのでしょうか?

 家族手当とは、社員の生計費を補完するために支給される賃金であり、通常、扶養家族の人数によって金額を決めています。 これは、家族を抱えて生活費のかかる社員が安心して仕事に打ち込めるようにという意味があります。


 最近は「結婚するしない、子供を作る作らないは個人の問題だから、そんなものに会社が家族手当を支給する必要はない」ということで、家族手当の廃止や減額の方向にあります。また、今まで家族手当が支給されるのは、多くは男性であり、男女差別が発生するということで、廃止の方向で検討しているところもあります。確かに、労働対価という面で考えると、不公平な賃金のように感じがします。しかし、私は「生活保障」の面と「顧客の創造」の面から、もっと充実すべき手当だと思っています。

 賃金には「生活保障の原則」と「労働対価の原則」の2つの側面があります。
現に、いくら成果主義といっても、フルコミッションで成果が出ないと賃金が0ということではなく、仮に成果が出なくても、明日がんばってもらうためにある一定水準の賃金が保障されています。
その保障されている金額が、家族数によって、保障にならない金額であれば、その保障は意味がなくなってしまいます。
やはり、ある一定金額は成績や能力と関係なく保障することで、安心して働ける環境が作れると思います。
したがって、賃金には生活保障の部分も必要であると考えるのが妥当でしょう。

 以前は、年齢給などで年齢によって生計費を補うという考え方がありましたが、ライフスタイルが多様化している現在では年齢による生活費はほとんど予測できない状況であり、生活保障という観点から言えば、年齢より子供の人数のほうが大きく影響を及ぼしていると思います。
 そう考えると、生活保障を家族手当により行うということは合理的であるということになります。

 また、 「究極の顧客創造」は人を増やすことであり、子供を増やすことだと思います。少子化が進んでいる日本で、その防止策を打たないで、少なくなっているヒトの中(小さくなっているパイ)で、「顧客創造だ」といっても限界があると思います。

 企業がまず行う「顧客の創造」は、社員が子供を作りやすい環境を整えることであり、個々の企業が永続発展のために、子供を作りやすい環境を作ることが必要であると考えます。そう考えると、家族手当(子供への手当)は非常に有効で意味のある手当になります。

 顧客の創造という点で考えてみれば、その子供が自社の顧客に育ていくわけであり、子供がたくさんいた方が顧客はたくさん増えるわけです。家族手当を人件費という枠ではなく、販売促進費という枠でとらえ、より多く支給することで、子供を生みやすい環境を作ることができ、また、今いわれている「顧客の創造」とも整合性が出てくるわけです。

 上記のような理由から、家族手当(特に子供に対する手当)を充実することが、良いような気がするのですが、いかがでしょうか?

 

 
   

114.マイナスの利益目標

 
   

 業績係数(達成率)について教えてください。
例えば  予算(目標) △10,000,000円 実績 △ 8,000,000円 差額 + 2,000,000円 の時があったとすると、達成となるのか? 達成となるとどんな係数(達成率)の出し方をしたら良いのか? 教えてください。(マイナス予算が良くないのですが、こういう場合もあるので)

 新規事業の立ち上げのときに、マイナスの利益目標を設定せざるを得ないときがあると思います。このような場合は、事前にどれだけマイナスを食い止めたら、どう評価するか決めておくと良いと思います。

 それから、マイナスの利益目標になるような場合は、利益目標ではなく、売り上げ目標と、経費削減目標、あるいは原価低減目標などに分解して、設定すると良いと思います。マイナスの利益目標だと、何もしないで、社員をくびにしたら達成してしまいます。
 

 
   

115.出張の移動時間の取り扱い

 
   

 出張で移動するため朝早く家を出たり、夜遅く帰ったりすることがあります。このような場合、時間外手当はつかないのでしょうか?

 出張の際の往復の旅行時間が労働時間に該当するかどうかについては、「通勤時間と同じ性質のものであって労働時間でない」とする説と、「移動は出張に必然的に伴うものであるから、使用者の拘束のもとにある時間とみて、労働時間である」とする説がある。

  この点、裁判例は、「出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがってまた時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である」としている。(日本工業検査事件・昭49.1.26 横浜地裁川崎支部判決)。

  したがって、移動時間中に、特に具体的な業務を命じられておらず、労働者が自由に活動できる状態にあれば、労働時間とはならないと解するのが一般的である。
  ただし、出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされている場合には、使用者の指揮監督下にあるといえるので、労働時間に含まれると考える。

 また、出張中に休日がある場合、その当日に用務を処理すべきことを明示的にも黙示的にも指示していない場合は、その当日は休日として取り扱わる。
 「出張中の休日はその日に旅行(移動)する等の場合であっても、旅行中(移動中)における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取扱わなくても差し支えない」とする行政解釈がある。

 なお、出張中の勤務時間に関しては、出張は事業場外で業務に従事するものであり、使用者がその実際の労働時間を確認することはむずかしい場合が通常である。したがって、このような場合、労働基準法は、「所定労働時間労働したものとみなす」と規定している。(第38条の2第1項)。